ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.181 [首長] 大久保 博 千葉県市川市長 「人生に間違ったレールなんてない!」

市長

千葉県市川市長 大久保 博
選挙区 千葉県市川市長

 

政治家になろうと思ったきっかけをお聞かせください。


私は30歳のときから社長として、57歳になるまでに2つの会社を経営してきました。ですので、若いころから政治家になってやる!と志していたわけではなく、周囲の方から市長になってみないかとお誘いがあって、市長を目指そうという思いになりました。



市民目線という言葉を大事にされていますね。


私はこれまでB to C、いわゆる消費者向けの仕事をおこなってきました。若い社員と営業にまわっていたときに、社員の説明が自己満足的でうまくいかないことがありました。そのようなときに、営業というのは相手の気持ちを動かさないといけないんだと感じ、仕事を通して相手の気持ちを考えることで市民目線を培っていきました。市役所もB to Cの世界であって、市民の生活と密接な関係にあります。私は職員に注意するときに、よく「それは公務員目線だ」と言います。市民がどのようなサービスを望んでいるのかという目線が、我々職員が条例やさまざまな制度をつくるときにも必要になってくるのです。



会社経営と行政の違いをどのように感じていますか。


行政の場合は必ず税収があるという点が会社経営と大きく異なります。会社は利潤を上げるのが目的で、経営不振が続けばリストラも含めたさまざまな手段をもって黒字化にむけて経営を行なっていきます。そのなかで、会社経営者は常に”倒産”を頭の隅に入れていますが、行政は一般的に倒産というリスクがないぶん、危機感に欠けるのかなと現場にいて感じることがあります。ですので、市民が求めるものを引き出す姿勢をもっていなければ、市民と行政の関係が水と油のようになり融合しなくなるという意識は常に持っています。



今後の市川市のビジョンをお聞かせ下さい。


行政サービスは税収によって賄われています。今後日本が人口減少時代に突入していくなかで、今後自治体が行政サービスを維持拡大していくには、税収と住民人口をセットで考えていく必要があると感じています。市川市はベッドタウンとしての機能も果たしているので、これからもずっと市川市で過ごしたいという市民を増やしていくには、市川市を魅力ある街にしていかなければなりません。隣の街と同じ景色だったら魅力のある街とはいえないので、個性を活かした街づくりを進めていきたいと考えています。



若者と政治の関係についてどうお感じですか?


現状として若者の選挙での投票率は低いですよね。これは行政の責任もあるでしょうが、本音を言えば世の中全体がそうだからやむを得ないのかなと思うところもあります。裏をかえせば、総じて日本は平和だということも示しているのではないでしょうか。若者の政治に対する関心は国政や行政への不満と比例していくのではないかと思っています。



今年市川市は市制施行80周年を迎えますね。


そうですね。ただ、いまの時代では一過性の支出は抑えるべきだというご意見もあるでしょうし、大きなイベントありきというのではなく、地味でも意味のある周年事業を、と思いますね。



市政の基盤である総合計画に若者の声は届いていますか。


“若者”という言葉が学生を意味するのか、子育てをしている20代や30代を意味しているのか、その範囲にもよりますが、基本的に自らの生活の活動範囲のなかでの不満や意見が多く、大局的な視点をもった意見は集まらないのが現状です。一方で、市のほうから特定のテーマを提示してパブリックコメントを募集すると、より建設的な意見を提供していただいています。



現在二期目ということで、一期目で果たせなかったことで実現させたいことはありますか。


行政は、地道な運営のなかで評価されることが多いと思っています。ですので、政治家として自分が行う政治と、行政府長としての自分が行う行政との均衡をとっていくことが大切だと感じています。政治家は選挙で当選しなければ職務を遂行できませんので、建物などの「ハコ」事業のように、市民が容易に良悪を判断することができる事業で成果を出したいという気持ちもあります。一方で、今市川市では昨年の台風で浸水被害を受けて、水害対策に力を入れています。この対策には膨大な費用がかかる一方で、成果を発揮するのは緊急時のみですので、事業を市民にかたちとして可視化することは難しいと感じています。しかしながら、このような地道な運営によっても市民からの信頼を獲得することができると思っているので、今後もしっかりとした予算配分を考えていかなる事態にも対応できる行政運営を目指していきたいと考えています。



市民の声をどのように吸い上げていますか。


市民の本当の声は現場に出向かないと聞くことができませんので、地域行事には自分自身が出かけていくようにしています。公務で出向いたときでも、市民同士の会話の中で、市として進めていたことが実は市民のニーズと食い違っていたということに気づいて、その後の取り組みに市民の声をいかすことができたという経験があります。



最後に若者のメッセージをお願いします。


基本的に若い世代が市政に関心を持つようになるのは、結婚や出産など人生における生活の転換点にあるときだと思っています。ですが、もう少し今現在の自分の生活から興味を持っていくことで、普段気づかない問題を発見することができるのではないかと思います。また、人生の先輩という立場から話しますと、私は高校3年生のときに、自分の目指していた進路から外れてしまいました。しかし私は、当時の一般的な学生とは違った苦労を経験したことが今の自分の礎になっていると思っています。今の日本はいまだに学歴社会かもしれませんが、どんな人もあきらめないでほしいと思っています。
もう一つ、会社経営者だったころ、部下に「いつまで自分の下で働くつもりなのか」とよく言ってきました。私は死ぬときに幸せな人生だったと思えるためには、チャンスがあるときにはそこに飛び込んでいくことが大切だと思っています。若いからこそ挑戦できることがたくさんあるので、色々な環境に飛び込んで、「独り立ち」してほしいですね。



(インタビュー:2014-02-10)


市川市立中山小学校
市川市立第四中学校
千葉県立国府台高等学校
東京電機大学工学部入学
同大学中退後、実家である川上産業株式会社に入社
1983~2008年 同社代表取締役
1989年 いちかわケーブルネットワーク株式会社設立
1989~2007年 同社代表取締役
2003~2009年 市川市国際交流協会副会長
2009年12月25日~ 市川市長(2期目)
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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