ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.159 [首長] 越川 信一 千葉県銚子市長 「若者には人と肌と肌でぶつかり合うことによって成長してほしい」

市長

千葉県銚子市長 越川 信一
選挙区 千葉県銚子市
公式ホームページ

 

市長になるまでの経緯をお聞かせください。


私は高校まで銚子に住んでいたのですが、大学と就職は東京でした。銚子に戻ってきたのは26歳のときで、会社を辞めて祖父の代から続いている日刊の地域新聞を手伝うようになりました。地域新聞という街づくりと自分の生活や商売が密接に関わる仕事をしていたからか、街づくりへの関心は高かったです。地元の若い力を結集するために青年会議所の活動に参加し、主体的に取り組みました。仕事に打ち込みながら活動を続けたわけですが、45歳になったときに自分の経験を行政に活かしたいと考えるようになったのです。その後6年間、市議会議員を務めました。市議会議員になったときも、市長になりたいという思いは持っていませんでした。しかし、議会と市長の対立を直接目の当たりにし、さらに2011年の市立病院の閉鎖問題や人口減少による市の衰退などを受けて「銚子市を変えたい」という思いが強くなり、今年4月の市長選挙に立候補いたしました。



市長のやりがいと葛藤について教えてください。


一番のやりがいは、本当にいろんな人に声をかけていただいたり、励ましていただいたりすることです。自分の打ち出した政策に対する感謝の言葉をいただいたときは、本当に嬉しいですね。そのほか、チームで物事を進めることも大きなやりがいのひとつです。仲間でいろんな意見を出し合い、喧々諤々の議論を通じて物事を前に進めていくのは、今まで味わったことのない経験でした。



市議の時と今では大きく何が異なりますか?


市議の時との一番大きな違いは、扱う情報量です。銚子市が今まで蓄積してきた情報もありますし、望めば600~700人の職員からいつでも様々な情報を受け取ることができます。これらを駆使して、市民の皆様に政策をお届けする訳ですが、その分市議の時代よりも政策を実現しなければという責任もあります。また、得られる情報が多いのでやりたいことも次々に出てきますが、小さな市ですからすべてを一度に実現するには予算が足りません。そこで、市議の時代にはあまり目を向けなかった、政策の優先順位について考えなければならないという難しさもあります。



銚子市を今後どんな市にしたいですか?市のビジョンを教えてください。


私としては、銚子市に活気を取り戻したいという思いがあります。そのためには、近隣の市に若者や企業が流出してしまうのを止めることができるような、銚子市ならではの魅力を確立することが大切です。
まず、銚子は治安がよく、災害に強いという利点を持っています。いつ来るかわからない地震や津波などの災害は、大きな不安を与えるものです。銚子は地盤が固く高台もあるので、被害を受けにくい土地です。また、昔からの人々のつながりがしっかりとしているので、治安も非常に良いのです。このように安心して安全に生活できる銚子をアピールしていきたいと思います。
その他にも、産業の魅力もPRしていきたいです。農業、漁業においては比較的所得が高いため、後継者不足という悩みは他の地域に比べて少ないです。漁業は金目鯛の千葉県内ブランド第一号で、若い漁師も育っていますので頼もしいです。農業も路地野菜が安定して生産、出荷できていますので、大きく手を加える必要はないでしょう。今後力を入れていこうと考えているのは、観光業です。銚子には風光明媚な海岸線もありますが、震災の影響で年間の来訪者数が激減しています。また、今は旅行の形態も変わってきていますので、その時代の流れにしっかり合わせてプランを練っていけば、結果はついてくると思います。



市長の学生時代にお聞かせください。


学生時代は政治に関心があったというわけではありませんでした。高校は地元の市立銚子高校に通っていましたが、その頃はまだ、主体的にまちづくりに関わっていたとは言えませんでした。部活動には参加していませんでしたが、ロックにハマり、バンドでギターを弾いていたのが思い出です。高校卒業後は慶應義塾大学の経済学部に進学しました。在学中は、実家の影響でメディアの研究をしたり、サークルでボランティア活動をしたりしていましたね。あとは、演劇にも興味があったので、暇を見て劇場に足を運び、仲間うちで演劇を楽しんでいました。



若者の関心を呼び起こす


今取り組んでいる企画に、「銚子芸術家構想」というものがあります。芸術家の卵と呼ばれる方々の多くは、食べていくのも大変で、なかなか自分の思い通りに夢を追うことができないというのが現状です。そこで、今は空いた老人福祉施設の土地や建物を利用して「アートビレッジ」というものを建設したいと思っています。そこに全国から16名ほどの芸術家を目指す若者を厳選し、3年間生活や創作活動をしてもらおうというわけです。出来上がった作品を年に一つや二つ寄贈していただいて、市の財産にしていきたいと思っております。また、施設には作品を展示するスペースも設けてあるので、市民の憩いの場や観光スポットとしての役割も期待しています。



最後に、若者へのメッセージをお願いします。


私の政治の理念は、「対話」で、皆さんにも自分と価値観や考え方の違う人と交わり、相手の話を徹底的に聞き切り、そして悩み抜いてほしいですね。社会においては価値観のぶつかり合いは日常茶飯事だからです。特に政治を志す場合には、顕著です。正解のない課題について決断を下すときに、考え方を異にするいろんな方々と接した経験はとても役に立っています。志を同じくする仲間と対話を持つ機会はいくらでもあると思いますし、そこでの会話は当然楽しいものです。しかし、自分と違う意を持つ人はたくさんいます。議会ひとつでもいろんな意見が飛び交い、その中で時には我慢したり説得したりして、お互い高めあうことができるのです。誠意を持って相手と対話し、たとえ納得できないとしても相手の意見を尊重するということが大切なのではないでしょうか。



(インタビュー:2013-10-24)


生年月日 昭和36年11月19日
出身地  千葉県銚子市
●学歴
昭和60年3月 慶応義塾大学経済学部 卒業
●主な経歴
昭和60年4月 株式会社日本リース 入社
昭和62年8月 大衆日報社 入社
平成19年5月 銚子市議会議員(1期目)
平成23年5月 銚子市議会議員(2期目)
平成25年5月 銚子市長就任
●その他歴任役職
・銚子青年会議所理事長(平成9年、銚子市こども議会開催)
・日本青年会議所千葉ブロック協議会経営開発委員長
・銚子商工会議所青年部理事
・市立銚子高校保護者部会長、後援会副会長、学校評議員
・銚子市立春日小学校PTA会長
・銚子市立第四中学校PTA会長
・中学校(第四中学校・第八中学校)再編計画懇談会委員
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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