ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.154 [首長] 高杉 徹 茨城県常総市長 「自分がいまここに居る意味をもう一回考えてほしい。」

市長

茨城県常総市長 高杉 徹
選挙区 茨城県常総市

 

市長になられたきっかけを教えて下さい


私は、平成11年の4月に地元の市会議員になりました。その後市会議員を4期務めてから市長へ挑戦しました。
私が市議会議員時代からずっと、今の地方自治体とりわけ市区町村のおかれている現状や予算がまだまだ、国や県の下請け的な状態であると感じていました。ですが、これは本来なら違う形でなければならない。市区町村は市民に一番近い政府であるべきです。ですから、市区町村にこそ優秀な人材、優秀な議員、優秀な官僚があつまらなければならないはずなのです。



市政と市民の関係について教えて下さい。


本当の意味での地方自治体を実現するためには、市長になって、市を変え、国や県との関係をかえる。そうして日本の政治構造をかえたいという思いで首長になりました。
市民に一番近いのは市区町村です。市役所にいると、障害を持つ親御さんの悩みをきいたり家庭に介護の必要なお年寄りのいる方の話をきいたり、子供が不登校になってしまった子をもつ親のお話を聞いたりする。そういった困った人たちの最初の窓口が市区町村なのです。こういった具体的な悩みを、どうしたら解決していけるのか。そういった身近なことから市の政策はすべてスタートしています。



政治家になろうと思ったきっかけはなんですか?


私は1970年に高校2年生で地元の高校の生徒会長をしていました。その頃は70年安保闘争があって私達の高校を含め日本中で反戦運動が盛んだった時期でした。私自身も昔はそういったものに参加し政治というものを間近に見続けていました。その後大学に入ってからも、学生運動に参加するなどしており、かなり早い段階から政治に関しての知識や接点は多かったと思います。
学生運動というのは、今の人からするとまるで宇宙人の話でもするかのような、全く別世界のことのようにに聞こえるかもしれないですが、私達の世代ではほとんど共通言語みたいなものです。
大学闘争が1960年代の末から始まって69年には東大闘争で東大の入試がなくなりました。高校受験が終わり次は大学入試!と意気込んでいた私達にとっては、目指すべき最大の目標が勝負の土俵に乗らなくなってしまったという大事件だったのです。
この時に私達は、「なぜ勉強をするのか」「なんのために大学に行くのか」という部分を根底から考えなおさなければならなくなりました。その点をみれば学生運動というのは私達にとっては文化革命に等しい衝撃だったのだと思います。
もうひとつ学生運動が盛り上がった背景にはベトナム戦争があったのだと思います。世界最大の国家であるアメリカが、当時最貧国の一つとも言えるようなベトナムを「なぜ爆撃するのか」「なぜそういう愚かな戦争をするのか」そういう反感はすごく大きかったのを覚えています。身近なところにあった戦争が、私達の今と社会との関係を改めて考えるきっかけになったのは事実だと思います。



この市の特徴について教えて下さい


この水海道という地域は、古くから鬼怒川の水運を中心に古くから栄えた地域で、江戸期から明治にかけては商都として物資の中継地として栄えた古い歴史があります。そんな関係から歴史的な文化財は大変多いのです。
一方で東京から一時間圏内、交通アクセスも良い地域です。そういった特徴からか、現在ではロケの町として全国一位といってもよいくらいこの地域でロケが行われています。数で言うと一年間でこの市で撮影される映画やドラマの本数が100本を超えていますし、先日通算で1000本になりました。
つまりそれだけ自然が豊かで、歴史的な文化財・景観もあり、かつ東京からも近い、そういう利点があることが大きなこの市の特徴です。
このようにロケの町として発展していることはこの地域の最大の誇りだとおもいますし、これを活かしたまちづくりをしていきたいとも思っています。

私は、まちづくりは、決してつくば市や守谷市のような近代開発志向ではなく、むしろ今まで築き上げられてきた歴史や自然を大切にして、その中で人が喜ぶような町をつくっていく形でありたいと考えています。
人が喜ぶということは
・自然が豊かで
・文化が豊かで
・人の心が落ち着いていて
・美味しいお米が食べられる
ということであると思っています。都心から50km圏内にこういう土地がある。だからこそこの町の良い所を徹底的に伸ばしていきたいと思っています。



市長としてのやりがいを教えて下さい


ロケの町として全国他にどこにもないまちづくりができていることがやはり最大のやりがいです。他と同じことをしていても意味がないのです。ここでしかできないこと、ここにしかない価値をいかに表現できるかそういうことを突き詰めていき、地方の小さな都市としてどういった魅力をだすのかを考え続けることが市長としての最大のやりがいです。



若者へのメッセージをいただけますか


・何のために勉強をするのか
・なんのために学校にいくのか
・自分はどう生きる(いきる)べきか
こういったことを原点として考えてほしいと思っています。
私からみていると今の若い方々は何のために勉強しているのかとか、何のために生きるのかとか、何のために学ぶのかというようなことをきちんと考えているのかはちょっとわからなく見えます。むしろただ闇雲に偏差値の高い大学にいっているだけにも見えてしまう時があります
社会に何か携わろうとした時に、いきなり政治でなくていいも良いので、いま自分のやっていることの意味をまずしっかり考えることから、社会とのつながりを見出して欲しいと思います。





昭和28年8月13日生まれ
早稲田大学社会科学部卒業
参議院議員秘書(昭和52年7月~平成元年7月)
(協)茨城県中小企業労務協会理事長(平成12年6月~現在)
水海道市議会議員(平成11年5月~平成17年12月)
常総市議会議員(平成18年1月~平成24年6月)
常総市長(平成24年8月~現在)
中小企業診断士
社会保険労務士
※プロフィールはインタビュー時のものです。

関連記事
  • Vol.243 [首長] 木幡浩 福島県福島市長 「若者が行き交う県都福島へ」JAPAN PRODUCER INTERVIEW

    ジャパンプロデューサーインタビュー

  • 橋川市長プロフィール用
    Vol.242 [首長] 橋川渉 滋賀県草津市長 「誰もが健幸に暮らせるまちを」

    ジャパンプロデューサーインタビュー

  • 山本市長プロフィール用
    Vol.241 [首長] 山本景 大阪府交野市長 「財政再建から持続可能な住宅都市へ。元証券マンの挑戦」

    ジャパンプロデューサーインタビュー