ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.143 [首長] 内野 優 海老名市長 「前向きに頑張ることで見えるものがあると思います。」

市長

海老名市長 内野 優
選挙区 神奈川県海老名市
公式ホームページ

 

政治の世界に入ったきっかけを教えてください。


私が皆さんと同じ大学生だったころは、議員や市長になろうとは思っていませんでした。
大学時代はアルバイトばかりしていましたし、勉強し尽くしたかどうかいえば疑問が残るほどです。
大学を卒業して海老名市の職員となりました。そこで市の職員として、自分の住むまちを良くするためにはどうしたら良いかということを考えながら仕事をしていました。そして5年が経った時に、市議会議員選挙の時期が来ました。その際、立候補を決意したことで政治の世界に入りました。このまちを良くしたいと考えていながらも、職員は規定を変える力はないのだと限界を感じていたことがありましたし、私自身、政治をやってみたいという思いもありました。やはり、政治がキライな人は政治家にはなれないでしょう。私は、市民のために制度を変えていこうとする議員の仕事と、その仕事を実際に行う職員が両輪のごとく進むことで、まちはとてもよくなると考えています。



なぜ市長になられたのでしょうか?


根本にあったのは、このまちを良くしたいという気持ちでした。それに加えて、周りの人から応援の声があったからです。市議会議員もそうですが、この二つがないと当選はできなかったと思います。市議会議員を4期16年間務めた経験も出馬することを決めた一つの理由です。

実際に市長になってみて強く感じたのは莫大な責任の重さです。皆さんもご存じのとおり、行政の役割は幅広く、施設や道路を作るし福祉サービスも行います。海老名市を運営する権限を持つ行政のトップとして、市民サービスの向上は常に考えていますが、時には市民に負担をお願いすることもあります。市民の代表である市議会議員に対し、議会の場で市長として言うべきことは言います。実際に市の職員と一緒に海老名市を運営していくのはとても重たいことだと思っています。



現在3期目ですが、特に力を入れている政策はありますか?


まず、子育て支援に力を入れています。海老名市では中学生までの小児医療費は無料となっています。また、市内全ての小学校にエアコンが導入済みで、現在はハウスダストなどの対策のために、ほうきを掃除機に置き換えてはどうかという話が進んでいます。
このような政策の背景にあるのは、若い世代の人たちが海老名市に住んで欲しいという思いです。少子高齢化が進んで市の高齢者の割合がどんどん増えていく中で、若者や子育て世代が海老名市に住んでくれると、税収はもちろん増えますし、まち全体に活気が生まれます。
また、海老名市はもともと交通の便が良く、東京や横浜にすぐ通えることから、生産年齢世代にはとても住みやすいまちです。それに加えて自然が豊かで、子育てには最適だと自信を持っています。
同時に、高齢の方が健康で生きがいをもって生活できるまちを目指しています。高齢の方からは、後期高齢者医療を無料にしてくれとの声が聞かれます。しかし、税金の使い方として、高齢者の医療費も無料としてしまうと、この先税収が減った際に対応することができなくなります。
そのため、高齢者が病気にならないような施策を考えています。健康増進センターを造り、高齢の方が安全にいきいきと運動できる施設を整えるなど、元気でいてもらえるような工夫をしています。



市民の方からここ30年で劇的に住みやすくなったとお聞きしました。


30年前までは駅前に何もなく、道路も整備が十分とはいえませんでした。そのような中で、海老名駅周辺地区の整備を進め、平成14年に東口地区で商業施設がオープンしたことで、まちのにぎわいが生まれました。また、近年では、海老名駅西口地区の土地区画整理事業による市街地整備でショッピングモールを誘致するなど、新たなまちづくりは積極的に行って来ました。

その中でも一番に考えていたのは、安心・安全でした。海老名市はもともと農業が盛んなまちです。三つの鉄道路線に九つの駅がある上、高速道路のインターチェンジも完成したことで、企業にとっても好立地なまちです。最近では大手企業の事業所の新規参入や規模拡大など、元気な企業が積極的に海老名で活動してくれています。
しかし、農地は昔と変わらずに存在しています。それこそ市役所も田んぼに囲まれていますしね。これは都市景観として素晴らしいものであると同時に、災害対策にもなっています。田んぼがあることで水害のリスクは軽減できる上に、畑は災害時の避難場所として活用することもできます。このように、利便性を高めることはもちろん大切ですが、安心・安全が第一だと考えています。



その他にココ数年で大きく改革したところはありますか


数年前から市役所の中を大きく改革してきました。市役所というのはもともと不思議なところです。机に向かって事務をしている職員は、電話もとるし市民が来たら対応もします。私はこれでは十分に集中して事務作業をすることは不可能だと思います。
そこで、それらの職員を分けることで、事務の効率化と同時に市民対応の向上を図りました。他の市役所とは違い、海老名市役所ではほぼ全ての職員が常に、市民が来る窓口の方向をむいて座っています。これにより、来庁された市民にすぐに気づくことができますし、横向きで話を聞くような失礼な状況も起こりません。
また、引っ越し一つとってもどこの窓口で何をしたらいいかわかりにくいとの声がありましたので、昨年、ワンストップで手続きや相談ができるよう総合窓口業務をスタートしました。庁舎1階の窓口をリニューアルし、各窓口も大きな表示や液晶画面を使ってビジュアル的に分かりやすくし、コンシェルジュとして職員を常駐させています。これにより、迷う方はいなくなりましたし、引っ越しの手続きでは一つの窓口で小学校の転校から年金の手続きまでできるようになっています。

このような市役所改革は市民の方からも大変評判がよく、他の自治体の職員もよく視察に訪れるほどです。これから税収は減っていく時代です。民間に委託をしていくことでスリム化かつ安定した市民サービスを提供することが必要ではないかとも考えています。



これからどのようなまちづくりをしていきたいですか?


買い物などで海老名を訪れる観光客の誘致も大切ですが、私はやはり、住んでみたい、住んでよかったと思われる海老名市にしたいと思っています。海老名市から引っ越して行った人のクチコミで、この住みやすさがどんどん伝わっていけばいいなと。先ほども申し上げたように安心・安全という意味ではほんとに誇れるところですし、利便性も高まっています。
また、教育という部分では海老名市民大学を作りたいと考えています。今まで学ぶ機会を得られなかった高齢者をはじめ市民の方が広く学べて、海老名の宝となる人材がどんどん輩出されるような大学にしたいと思っています。これもどんどんと進化させて、実際の大学教授を呼んで授業をしてもらうなど、内容も深めて行きたいと考えています。



若者へのメッセージをお願いします。


まず1点目として、若者が市政に関わることはとても良いことだと考えています。
市民参画といっても社会人の方はなかなか時間がとれません。審議会の開催や議会の傍聴は平日ですから。そのために現在ではそのような機会には必然的に高齢者の方が多くなっていますし、審議会に社会人の方をお呼びしても、勉強する時間はとれないのだろうなという感じがあります。その点、大学生の皆さんであれば勉強する時間もありますし、それこそ審議会を主導するくらいの力のある学生さんはたくさんいると思います。公募制を採っている自治体の審議会もあるので是非調べてみてください。

2点目は特に伝えたいことです。
とにかく前向きに目標をもってがんばってください。失敗は誰でもあります。その時に後ろを向かず、自分の目標に向かってがむしゃらに進んでいってください。そうすることで見えてくるものはありますし、得るものも大きいことを保証します。



(インタビュー:2013-02-21)


1955年(昭和30年) 神奈川県海老名市生まれ
1974年(昭和49年) 神奈川県立厚木高等学校卒業
1978年(昭和53年) 専修大学法学部法律学科卒業
1978年(昭和53年) 海老名市役所に奉職
1983年(昭和58年) 海老名市議会議員に当選(以後、連続4期当選)
1999年(平成11年) 海老名市長選挙に立候補し、惜敗。
2003年(平成15年) 海老名市長選挙に立候補し、当選。現在3期目。
※プロフィールはインタビュー時のものです。

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