ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.247 [首長] 佐藤孝弘 山形県山形市長 「持続可能で魅力的な都市づくりを目指して」

JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.247

「持続可能で魅力的な都市づくりを目指して」
山形市長 佐藤孝弘

山形県の県庁所在地として、発展してきた山形市。これからの山形市の発展のための取り組みに関して佐藤市長にお話をお聞きしました!

【市長と市民の関わり】

ー市長を志したきっかけは何ですか?

佐藤市長

小学校高学年の頃から政治家志望でした。私の生まれは北海道函館市なのですが、私の父が函館市役所の職員で日々の会話で行政や政治の話をする機会が多かったため話していく内に政治家になりたいという気持ちが芽生えました。直接的なきっかけは、東京の政策シンクタンクで研究員として働いていた時に国会議員の遠藤利明先生から「市長となって山形市のために力を発揮してほしい」と要請をいただいて出馬いたしました。35歳で一度立候補して落選したのですが、4年後の2度目の選挙で当選いたしました。昨年、3度目の当選をして現在3期目になります。

ー市民の方々との交流で大切にしていることを教えてください。

佐藤市長

多くの方の意見を集めることです。選挙で一度落選してから4年間という期間もあったので、その時から市内隅々まで回って多くの方の市政に対する考え方や地域活性化についての考え方を聞きました。今でもその姿勢は大切にしていますし、こちらから現在市政として進めていることを市の各地区に直接お伝えする機会なども作っています。山形市は30地区あるのですが、市政懇談会という形でほとんどの地区で私が直接出向いて市政の話をしています。また、政治家としても市内全域で市政報告会を行っており、このような場で市民の方の声を聞いて市政に活かすという取り組みもしております。このように、常日頃から市民の方々とコミュニケーションを取るよう心がけております。

【健康と文化から魅力ある山形市へ】

―佐藤市長の考える理想の山形市について教えてください。

佐藤市長

今ビジョンとして掲げていることがそのまま理想です。現在は「健康医療先進都市」と「文化創造」という二大ビジョンを掲げています。当市の強みを生かしたいという観点から、さらに強みであるのにまだそれほど認知されていない、この2つを掲げました。「健康医療先進都市」としては、山形市が豊富な医療資源を活かし、さらに強化していくことに焦点を当てています。市内には市立病院、県立病院、そして山形大学医学部附属病院があり、診療所も多く存在しています。特に注目すべきは、東北地方や北海道で唯一、重粒子線がん治療施設が山形市にあることです。今後、全国的に医療環境が非常に厳しいと言われるなかでも山形市は最先端かつ多くの診療施設を持っているために、強みであると思います。
このほか、2019年4月の中核市への移行により、山形市は独自の保健所を設置できるようになりました。これにより、山形市は医療人材を市職員として採用し、保健所を健康医療の推進におけるシンクタンクとして活用しています。これらの取り組みが山形市の持つ独自性や強みをさらに伸ばし、市全体を元気にするための重要な戦略であると考えています。
そして、健康の面では、地産地消による食文化の豊かさがあることも山形市の強みです。米、野菜、果物といった多様な農産物があり、それぞれが高い品質を誇っています。市内には多数の温泉が存在し、豊かな自然環境も市民の健康を支える重要な要素となっています。
「文化創造都市」も全国に誇れるものだと思います。山形市は、その歴史的背景に根ざした文化的資源を活かした都市発展を目指しており、伝統工芸や日本の伝統文化に親しむ市民が多いことがその強みです。特に、山形市は城下町としての歴史を持ち、文化や伝統の深いベースが存在します。音楽面では、山形交響楽団というプロのフルオーケストラが存在し、東北地方でこれを有するのは仙台市と山形市のみです。このオーケストラは、国内で高い評価を受けており、専門雑誌「音楽の友」において日本国内で6位にランクインするなど、その実力は全国的にも認められています。
また、山形市は東北芸術工科大学を有しており、この地域で美術大学があるのは山形市と秋田市のみです。さらに、国際的な規模を誇る映画祭も開催しており、2年に一回行われる国際ドキュメンタリー映画祭は、30年以上にわたり続いている歴史あるイベントです。この映画祭は、世界中から注目される存在感があります。2017年には、ユネスコの創造都市ネットワークにおいて映画分野で認定を受けるなど、文化芸術の力を都市戦略として活用する試みが認められています。
このような市の強みをさらに活かして持続可能な街づくりを進めることが基本的な都市戦略の考え方です。そのために、健康医療と文化創造の二つの分野を強化し、市をより活動的な場所にしていくことが私の理想です。

ー理想の山形市を実現する際の課題と、それを解決するための取り組みについて教えてください。

佐藤市長

課題は山ほどあります。市の潜在的な強みをもっと掘り起こし、活用することが課題であると思います。そのために、「健康医療先進都市」と「文化創造都市」の二大ビジョンを効果的に利用して政策を推進しています。特に中心市街地の活性化に力を入れており、この取組は、大沼デパートが閉店し百貨店がないという状況の中で、地域の振興に大きな意義があります。市は「中心市街地活性化のグランドデザイン」を策定し、これに基づいて様々な施策を進めてきました。その結果、昨年10月には、調査開始以来過去最高の歩行者通行量を記録し、「歩くほど幸せになるまち」というコンセプトを実現しています。このコンセプトは人々が街中での回遊を楽しめるような環境を作ることに重点を置いています。市は、居心地の良いスポットや立ち寄れる場所を設けることで、市民や訪問者が中心市街地を歩いて楽しむことができるように努めています。また、文化的な側面からも市街地の魅力を高める取り組みを行っており、旧小学校の校舎をリノベーションし、やまがたクリエイティブシティセンター Q1として、文化創造都市としての拠点施設に変えました。この施設は、地域の文化的活動を支える中心となっています。これらの施策を通じて、健康と文化の二つのビジョンを活かした持続可能で魅力的な都市づくりを進めていきたいと考えています。

【山形市のPR戦略】

ー政策に反映されている市長の経験はありますか?

佐藤市長

最近で言うとラーメンがブレイクしたことです。総務省の家計調査のデータによると、山形市は8年連続でラーメン消費額が日本一でした。一方、お店の数も多いし美味しいのに全国的には知られていないという状況でして、なんとかして山形のラーメンをPRしたいという課題がありました。しかも、8年連続一位の後、実は新潟市さんに負けてしまって。そこで、1位奪還するぞという切り口で発信を始めてみたのです。すると、メディアの方からすごく取り上げていただいて、ケンミンshowをはじめ、全国的な番組にどんどんラーメンが取り上げられました。そして翌年、1位を奪還でき、現在でも一位を維持しています。元々ラーメンは山形名物ではあるのですが、このような切り口を1つ作ったことで全国ブランドに進化できたと思っています。やはりPRは大切です。今まで仕事をする中でも、いいものを作っても知ってもらわないとどうしようもないと感じることが非常に多くありました。職員の皆さんも一生懸命政策を実行していますが、それをPRする力が弱いとその効果も半減してしまいます。ラーメンの事例のように、うまくPRすることを心がけていますね。

【若者へのメッセージ】

ーこれからの日本を担っていく若者への激励、メッセージをお願いします。

佐藤市長

とにかく志を大きく高く持っていただければと思います。これは政治家に限った話ではなく、企業に就職して働くにしても、自分で商売始めるにしても、全部に言えることだと思いますが、やはり個人的な興味・関心を超えて、社会を良くしたいという志、思いを持ちながらやってもらえると嬉しいですね。結果的に自分の成長に繋がったり、より大きな仕事ができたりすると思います。私も山形市を元気にすることが日本を元気にすることだという思いでやっています。今、地方都市はみんな厳しいと言われる中で、山形市でいい事例が出れば、それが波及して全体に繋がることもあると思っています。

(インタビュー:2024-04-11)

プロフィール

■生年月日昭和50年9月30日
■学歴東京大学法学部卒業
■職歴平成12年 通商産業省(経済産業省)入省平成15年 起業(おにぎり専門店経営)平成17年 日本経営合理化協会勤務平成19年 公益財団法人東京財団研究員
■略歴平成23年 山形市長選挙に立候補し、次点となる平成27年 山形市長就任(現在3期目)

※プロフィールはインタビュー時のものです。

(2024年4月11日 佐藤市長とドットジェイピースタッフ)

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