ジャパンプロデューサーインタビュー
Vol.245 [首長] 山田賢一 福井県越前市長 「ウェルビーイングの越前市 ~幸せを実感できる ふるさと~ 」
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.245
“ウェルビーイングの越前市
~幸せを実感できる ふるさと~”
越前市長 山田賢一
福井県の中央に位置する越前市。
歴史と文化、自然の豊かさを活かした
ウェルビーイングなまちづくりに関して、
山田市長にお話を伺いました!
【市長を志したきっかけ】
— 山田市長が市長を志すきっかけについてお聞かせください。
山田市長:
『なるべくしてなった』という表現の方が適切かもしれません。もともと私は政治家や市長を目指していたわけではありませんでしたが、大学を卒業して県庁に入庁しました。そこで様々な職務を経験し、県の部長職を3つ歴任しました。最初に産業労働部長として観光や産業振興を担当し、その後、総合政策部長として新幹線や原子力地域振興を含めた県全体のコーディネートを行いました。その後、短期間ですが総務部長を務め、最後には副知事として2年間の任期を全うしました。
その後、福井県立大学の理事長を2年間務めました。ちょうどコロナ禍で、大学のコロナ対策や新たな学部、特に恐竜学部の設立準備などに携わりました。長期に渡って私のふるさとの越前市を県庁から見る立場にあったので、長い歴史や豊かな伝統工芸、先端企業が集まるこの地域が、もっと活躍できるとは感じていました。20年前に合併して誕生した越前市は、多くの可能性を秘めていますが、まだそれを十分に活かしきれていないと感じていました。
そこで、県庁での経験や人脈を越前市のために活かすべきではないかという声をいただき、市長選挙に立候補し、当選しました。そして、市長として新たな時代を迎えた越前市の発展に貢献する使命感を持って活動を始めました。経験と地域への思いからこの道に進んだということだと思います。
【市長の想う理想の越前市】
― 山田市長が考える理想の越前市についてお聞かせください。
山田市長:
越前市は産業、自然、人材といった多方面において非常にポテンシャルの高い地域です。歴史も非常に古く、紫式部の時代から「大国」として栄えてきました。特に農業が盛んで、米が豊富に取れる豊かな土地でした。しかし、福井県では若者が高校を卒業すると県外に出てしまい、戻ってくるのはごく一部です。越前市でも同じ現象が起きており、若い世代がどんどん減っていくという問題に直面しています。
この人口減少は全国的な課題であり、地方も深刻な影響を受けています。地域活動に参加する人手が不足したり、消費や生産が落ち込むなど、様々な問題が発生します。この流れを止めなければならず、地方の良さを見直して、住民が自分の地域に誇りを持ち、住み続けたいと思うような地域を作る必要があります。
私自身、県庁で地方創生や地方分権の仕事に長年携わってきたので、この問題の重要性を強く感じています。若者が一旦都市部に出ても、またふるさとに帰りたい、あるいは外からも移り住みたいと思えるような地域を作らなければならないと思っています。人生100年時代の中で、どの世代の人も、どんな状況にあっても、安心して幸せに暮らせる地域を目指すべきだと考えています。
そのためには、越前市が持つ歴史や文化、産業といった「宝物」を磨き、発信していくことが重要です。地域に活力を与え、人々が繋がりを感じながら安心して暮らせる場所を作ることで、「ウェルビーイング」のふるさとを実現することが私の最終目標です。そのために、様々な政策やプロジェクトを進めていきたいと考えています。
【理想の越前市を実現する政策】
ー理想の越前市を実現する際の課題と、解決に向けた現在の取り組みについて教えてください。
山田市長:
2023年末に、新しい総合計画として「ウェルビーイング(幸せを実感できるふるさと)」を目指すビジョンを策定しました。このビジョンを実現する上で重要なのは、具体的に「どうやって」それを達成するかです。政治や行政では、何をやるかだけでなく、それをどう実行するかが最も重要だと考えています。
目標として掲げるのは大きく3つです。まず1つ目は「10万人の元気と活力」です。人口が減少している中でも、地域に活力を生み出すことを目指しています。具体的には、これまで越前市は製造業が中心で、物を作って外に売る経済モデルでしたが、今後は観光などの外需も取り込むことが重要です。観光による人の交流や消費を促進し、地域経済を回していくことを目指しています。
2つ目は「100年人生の幸福実現」です。これは、子育て支援や教育、高齢者福祉、介護、医療など、全世代にわたって安心して暮らせる環境を整えることです。例えば、保育料の無償化や18歳までの医療費無償化、特定不妊治療の自己負担ゼロなど、すでに実施している支援策も多くあります。また、介護予防が進んでおり、介護認定率が全国平均よりも低いことも特徴です。高齢者が元気で長く働けるような社会を目指しています。
3つ目は「1000年未来につなぐふるさとづくり」です。災害への対策や、安心して暮らせるインフラの整備を進めることが重要です。北陸地域は災害が多いですが、そのリスクに備え、地域の安全を確保することが不可欠です。また、地域コミュニティのつながりも幸せにとって大切です。
これら3つの柱に基づき、12のチャレンジプロジェクトと36の政策を実行しています。特に、地域ブランディングを通じて、越前市を多くの人に知ってもらい、訪れてもらい、住んでもらう取り組みを進めています。行政は一種の営業活動だと考えており、外部に向けた働きかけを強化することで、地域の価値を高めていくことが重要だと思っています。
【政策に生かした人生経験】
ー山田市長の人生経験がどのように現在の取り組みに反映されているのでしょうか?
山田市長:
はい。先ほど少し触れましたが、私は「行政営業」を15年前から実践してきました。当時、福井県では「営業課長」として、県の資産を効果的にアピールする役割を担いました。特に恐竜博物館の例があります。当初、来場者は20万人台でしたが、営業活動を通じてその価値を広く知ってもらい、今では100万人を超える集客に成功しています。
こうした経験から、最も重要だと感じるのは「人との繋がり」です。外部との連携や民間企業との協力、さらには国の省庁との関係を活かして、お互いに利益のあるプロジェクトを進めてきました。市長としても、この「人の繋がり」が大きな力となっています。中学や高校、大学の同級生など、利害関係のない友人たちの応援も受けながら、多くのプロジェクトを推進しています。
行政の仕事を進める上で、人と人との信頼関係が非常に強力な助けになります。県の行政経験を通じて、官民の垣根を超えてプロジェクトを進め、単に税金を使うのではなく、収益を生み出す取り組みも進めています。こうした人生で培ってきた経験を、今まさに市政の中で実行しているところです。
【若者への激励】
— 最後に、これからの日本を担う若者に向けた激励やメッセージをお願いできますか?
山田市長:
若い頃から公的な事柄に関心を持つことが非常に重要だと感じます。多くの人は自分自身の目標や希望に注目しますが、パブリックな問題にも目を向けることは大切です。これに興味を持つことは、政治家や行政職に限らず、民間企業においても必要で、官民連携や公共事業に携わる機会が多く存在するからです。コンサルタントの仕事でも、公的な領域との繋がりが必要です。
もう一つ大事なことは「人との繋がり」です。ドットジェイピーで築いた人間関係や、学校や趣味の活動での出会いは、仕事や人生において非常に重要です。これらの繋がりを大切にし、定期的に連絡を取ることで、信頼を深めることができます。特に、共に困難を乗り越えた人との関係は、将来的にお互いの支えになる可能性が高いです。オンラインでの繋がりも重要ですが、対面での交流も忘れずに、しっかりとした絆を築くことが大事です。
最後に、どうやってそれを実現するのかという「方法論」を考えることが重要です。「こうなったらいいな」と夢を描くことは簡単ですが、それを実行するための手段や資金、責任を誰が負うのかを考えることが求められます。公的な問題に関心を持ち、人間関係を大切にし、実現方法をしっかりと考えることが、自身の成長と社会への貢献に繋がり、最終的には幸せを感じることに繋がるのではないでしょうか。
(インタビュー:2024-09-26)
プロフィール
■生年月日
昭和33年9月25日
■学歴
京都大学法学部卒業
■職歴
平成27年5月 福井県総合政策部長
平成29年4月 福井県総務部長
平成29年7月 福井県副知事
■略歴
昭和33年9月 越前市長(現在1期目)
※プロフィールはインタビュー時のものです。
2024年9月26日 zoomにて
(山田市長とドットジェイピースタッフ)