ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.241 [首長] 山本景 大阪府交野市長 「財政再建から持続可能な住宅都市へ。元証券マンの挑戦」

〝財政再建から持続可能な住宅都市へ。
元証券マンの挑戦〟

交野市長 山本景
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.241

奈良県との県境に位置し、
のどかな田園地帯に囲まれたのどかな住宅都市、交野。
財政の健全化と子育て・教育に力を入れ、
日々奮闘する山本市長にお話を聞きました!

<政治の道に進むきっかけ >

ー市長を志したきっかけを教えてください。

山本市長:

私は民間企業で働いていた頃、交野市が土地開発公社関係の借金350億円で、大阪府内でも1番目2番目の多額の借金を抱えていることに気づきました。

交野市の財政の健全化を図るためには、サラリーマンや一般の市職員では難しいと感じ、首長でないとできないと考えました。

そのため、地元である交野市に戻って政治活動を始め、市議会議員、大阪府会議員を経て、現在の交野市長に至りました。今もまだ借金は残っていますが、当時ピーク時に350億円もあった土地開発公社の借金の精算、返済のところをやりたいということが、そもそもの市長を目指したきっかけです。

< 持続可能な住宅都市を目指して >

ー山本市長の考える30年後の理想の交野市とはどのような市でしょうか?

山本市長:

はい、私は持続可能な住宅都市を理想としています。人口は77,000人で、主要な産業はほぼありません。市の半分は山地で、住宅が多く建っているため、産業育成や工場系の誘致をしても現在の良好な住環境は守られないと考えています。

その上で、交通の利便性を活かしたまちづくりを重視しています。第二京阪国道やJRの快速停車駅、京阪電鉄の駅が4つありますので、「交通の利便性も生かした住環境の良い町」を維持することが重要だと考えています。

具体的には、一定調整区域でまちづくりを続け、新規の住宅着工戸数を増やすことを考えています。新しい家を建てると若い世代も多く引き寄せられますので、高齢化社会の中でも若い世代や子育て世代を呼び込むことができると考えています。

また、交野市は転入超過の傾向にあり、令和5年の1年間では299名の転入がありました。その内訳として0〜4歳の子供と、30代、40代の親が多く転入しており、子育て世代とその子供が多く転入している状況です。

< 総合計画書の背景 >

ー総合事業計画書のなかに「みんなでつくるみんなの交野」を掲げている背景を教えてください。

山本市長:

まず、前置きをすると首長は施政方針や所信表明には相当関わっています。しかし、総合計画書は役所が過去から原型になるものを作っていて、それを引き継いでいるものがほとんどです。したがって、私の意向とは少し違うことも多々あるのは事実ですし、特に計画ものは一度作ると役所はその通りに動くところがあります。

そのため、基本的には施政方針や所信表明を参考にしていただきたいです。「みんなでつくるみんなの交野」というのはできるだけ多くの方の意見をしっかり聞き、ベストとまではいかないまでもそこから出てきた施策をやるというのが基本的な考え方です。

また市長として、水道料金を上げざるを得ない、もしくは施設の廃止、もしくは学校の統廃合をしないといけないなど住民の方からすると悪い話をしなければならないこともあります。ただ、できるだけ皆さんの意見をしっかり聞いて、 そして皆さんの意向にできるだけ沿うような形で、少なくとも納得、理解は最大の人から得られるようにしていきたいと思っております。

具体的には、私の元々の専門分野は統計でしたので、世論調査には力を入れています。中でも、1番公平な調査は電話世論調査だと思っています。郵送の調査だと普通の方はなかなか返信をしてくれず結果が歪みます。またネットの調査も、ごくごく一部の方がいっぱい回答しますので母数が偏って回答がおかしくなります。携帯をメインにすると対象者が広すぎて特定のエリアで調査ができないので、固定電話に限って世論調査をして、今の市政を評価するしないとか、 またわからないかを聞いています。

本当は市民全員から話を聞けたらいいのですが、 そういうわけにはいかないので、電話世論調査を実施してよりみんなに聞いた形に近いように、施策については展開、推進をしています。

< 政策に反映されている経験 >

ー政策に反映されている市長の経験について教えてください。

山本市長:

私は野村証券で課長代理として勤務し、スピード感重視の社風で培われた価値観を持ち、現在は市長としてその経験を活かしています。

市民に良いものをより早く提供することを重要視し、

・能登半島地震の給水車派遣
・AI循環式シャワー車の導入
・仮ナンバーの回収
・越境木の強制切除

などの施策を、全国に先駆けて実行してきました。

これらの施策はメディアでも取り上げられ、スピード感の重要性が評価されています。失敗しても責任は私が取るので、職員は安心して仕事に取り組める環境を作っています。市長という立場だからこそ、住民のためにできるだけスピーディーに取り組み、正しい結果を出す責任を負うべきと考えています。

ー今に活きている学生時代の経験を教えてください。

山本市長:

学生は色々なチャレンジをした方がいいと思っています。

私は学費とかも親に色々言われたくなかったので、塾講師をやりながら、パソコンやプログラムも好きだったので自分でインターネット関係のホームページとか、掲示板などを作る会社を運営をしていました。

当時は約40、50万人の方に利用いただいたのですが、インターネットの掲示板やホームページ運営は社会的にあまりいいイメージを持たれていないので、広告がつかず、収益性は低かったです。最終的には実業家のホリエモンさんに会社を買ってもらい、一度就職をしました。

学生は社会経験もないと言われたらそれまでかもしれないですけど、それだけ色々なことができる時間と年齢はこのタイミングしかないと思っています。30代になってからいきなり何か新しいことをしても、上手くいかなかった場合にやり直しがなかなか難しいと思います。

なぜなら、すでに一定の人生の方向性が出ているので、それよりは学生の4年間ないしは6年間は本当に大事な期間であり、失敗しても別に許されますし、もし上手くいかなくても就職するなり、色々な方向があると思っています。 そういう意味では、私は学生のうちに自分がやりたいことを失敗を恐れずに、自分が信じる道を自信を持って、やる気を持って歩んでもらえたらなと思っております。

その方が今後、何もせずに就職をして、もしくはやりたいこともやらずに就職をして、もしくは社会人として働くより、結果ははるかにいいものになるのかなというように私は思っています。

< 若者へのメッセージ >

ーこれからの日本を担っていく若者への激励、メッセージをお願いします。

山本市長:

日本は深刻な少子高齢化に直面しており、解決には出生率の向上が必要です。しかし、これは日本だけでなく世界的な課題であり、簡単ではありません。

若者が社会を変えるためには選挙を通じて意思表示をすることが重要です。しかし、現状では若者の投票率が低いことが問題となっています。

間接民主主義である日本では、まず選挙に参加し代表者を選びましょう。同時に、選挙以外にも、自分の可能性を信じて積極的に行動してください。社会を変える方法は様々です。

今やりたいことは最大限やって、未来を切り開いていきましょう。

(インタビュー:2024-02-27)

プロフィール

■生年月日 
昭和55年3月12日
■学歴
平成10年3月 私立大阪桐蔭高等学校卒業
平成14年3月 和歌山大学経済学部卒業
平成16年3月 大阪大学大学院経済学部卒業
■職歴
平成11年11月 AAA!CAFE取締役副社長就任
平成14年4月 AAA!CAFE代表取締役社長就任
平成16年4月 信金中央金庫就職
平成19年8月 野村証券株式会社就職
平成23年4月 大阪府議会議員就任
平成27年10月 交野市議会議員就任
■略歴
令和4年9月 交野市長就任

※プロフィールはインタビュー時のものです。
山本市長とのインタビューの様子
2024年2月27日 zoomにて
(中央上:山本市長 その他:ドットジェイピースタッフ)

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