ジャパンプロデューサーインタビュー
Vol.236 [首長] 品川 萬里 福島県郡山市長 「誰一人取り残されないまちを実現するために」
〝誰一人取り残されないまちを実現するために〟
郡山市長 品川萬里
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.236
福島県の中央に位置し、仙台市に次ぐ東北の拠点として発展してきた郡山市。
音楽都市としての側面ももつ郡山市が近年取り組みを始めたSDGsに関して、
品川市長にお話をお聞きしました!
< 政治の道に進むきっかけ >
ーどのように市長選への出馬をご決断なさったのですか?
品川市長:
人生は二者択一の連続です。その中で私は市長になるほうが人生に悔いは無いのでは、と考えて立候補しました。もっとも、市長という職業は「なろう」と思ってなれるものではなく市民の負託を受けて初めて就くことができますので、応援してくださる方がいなければこの市長という道を取れませんでした。
< 誰一人取り残されないまちづくり、郡山市 >
ー現在郡山市ではSDGsに力を入れていますが、なぜSDGsに力を入れるようになったのでしょうか。
品川市長:
郡山市の可能性を最大限に引き出すためには、何事も俯瞰して考える必要があります。「世界の中での郡山」を俯瞰し「日本の中での郡山」を考え、さらによりミクロな視点である「福島県の中での郡山」とミッションを探り、市民の皆様が持てる力を最大限発揮できるまちを目指そうと思いました。そのような中で、SDGsのスローガンである「No one will be left behind」こそが郡山市に相応しい精神であると考え、市民の皆さんとの共通の考え方として私たちのガイドラインとすることにしました。
ーSDGsの他にこれから郡山市で取り組んでいきたい政策はありますか?
品川市長:
私たちは地方自治法に基づいて仕事をしています。また、一人一人の人生を見ると現代は生涯学習の時代であると言えます。それを踏まえて、令和5年度は「自治力」と「生涯学習力」を高めていきたいと考えています。独立自尊という言葉がありますが、一人一人が自分のことは自分で決めていく、お互いがお互いの人生の方針を尊重し合うということが、これからの時代は益々大事になってきます。それは青春時代など一時ではなく、生涯にわたって重要なことです。
その「自治力」と「生涯学習力」が、本市のルーツである「開物成務」という考え方にも繋がっていきます。「自治力」「生涯学習力」をもって「開物成務」を成し遂げ、これからの郡山市、そして将来の子孫のための郡山市の基礎を創っていきます。
こう考えた理由として、先進国はそれぞれ程度の違いはあっても概ね少子高齢社会になっていることが挙げられます。本市の出生人口も毎年減少しており、0歳児は遂に二千人を下回りました。しかし、これでも福島県内13市の中で一番若者が多いのです。これらを踏まえ将来にわたって持続可能な都市であるためには、少ない人数で様々な課題を解決していく生活スタイル、行政スタイルを創る必要があり、次代を担う子ども達に一人二役、一人三役の活躍をしてもらえることが不可欠です。現在の子どもたちが就職して働くころには、少人数であっても社会が成り立つ仕組みづくりを今から準備しなければなりません。
その意味で、最近言われている「タイムパフォーマンス(タイパ)」が重要です。コストパフォーマンスという言葉もありますが、タイムパフォーマンスを上げれば結果的にコストパフォーマンスも上がるので、私たちは今後タイパ行政をやっていくつもりです。会議も今までは1時間だったものを30分で行い、決裁も3日かかったものを1日で済ませる。このようにタイムパフォーマンスを重視したスタイルというのが、サステナブルジャパンになるための必要最小限の条件と考えております。
「子どもを産み育てやすいまち」という言葉はよく耳にしますが、「子どもが生まれ育つ」、他動詞でなくて自動詞のまちを創ることが望ましいです。そこで、どのように「子どもが生まれ育つ」まちづくりをしていけば良いのかと考え思い至ったのが、先に述べた「自治力」「生涯学習力」です。これからはタイパ行政を行い、少子高齢社会の中にあっても持続可能な社会を構築し、地球地図、日本地図、福島県地図の中で役割を果たしていくことがサバイバル、サステナブルに繋がります。
ーこれからの郡山市の理想はありますか?
品川市長:
市長として行う業務は様々ですが、どのような業務であっても、それを執行するにあたっては根拠となる法律があります。憲法や法律、条例などです。そこには行政、議会、市民、あるいは企業の皆さんが出来ることやどのようなことを守らなければならないのかなど、権限と責任が定められています。市長の業務は、その選択の可能性の中で執行されていますが、私は何よりも「自由」を大事にしてまいります。「自由」か「平等」かではなく、「自由の平等」です。
「都市の空気は人を自由にする」といいますが、そこに住む人が色々なことができる、例えば、どんな人でも学生になることができる、ビジネスができる、様々な社会活動ができる、というように自由な選択ができる場所が「都市」です。このような「人々が自由に、自分のやりたいことをできる条件が揃っている都市」「楽市楽座郡山」こそが、本市の将来像として理想です。
< 若者へのメッセージ >
ージャパンプロデューサーとして、政策立案やまちづくりに取り組む学生に向けてアドバイスお願いします。
品川市長:
まずは基礎知識、基礎心技体を身につけるために勉強すること、これが大事ですね。私が学生だった頃と違い、現代は学びたいことを自由に選択して学習することができる、機会に恵まれた時代です。ぜひその自由を謳歌して、沢山学んでください
(インタビュー:2022-12-21)
プロフィール
■生年月日 昭和19年12月19日
■学歴
郡山市立金透小学校卒業
郡山市立郡山第五中学校入学、勿来市立植田中学校卒業
福島県立磐城高等学校卒業、東京大学法学部卒業
■職歴
郵政省入省
東北郵政局長
貯金局長
放送行政局長
郵政審議官(国際担当)
大阪大学客員教授
株式会社NTTデータ代表取締役副社長
法政大学IT研究センター学術担当教授
法政大学教授
NPO法人日本幼児教育振興會理事
■略歴
2013(平成25)年4月 郡山市長(1期目)
2017(平成29)年4月 郡山市長(2期目)
2021(令和3)年4月 郡山市長(3期目)
※プロフィールはインタビュー時のものです。