ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.232 [首長] 宮嶋 謙 茨城県かすみがうら市長 「活力とあたたかさのあるまちへ」

〝活力とあたたかさのあるまちへ〟
かすみがうら市長 宮嶋謙
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.232

茨城県南地域に位置するかすみがうら市。
日本で2番目に大きい湖・霞ヶ浦と筑波山系の山々に挟まれ、自然豊かな場所。
この場所で、新しいかすみがうら市実現のために取り組んでいくこと、
そしてまちづくりへの思いを市長にお聞きしました!

< 政治の道に進むきっかけ >

ーかすみがうら市長を目指したきっかけについて教えてください。

宮嶋市長:

私は、20代から40代まで政治関係やスポーツ、健康など色々な雑誌の編集の仕事をしていました。ある時、取材で茨城県へ行く機会があり、今の妻と出会い結婚し、茨城県に住み始めました。

義父は、前の出島村(茨城県新治郡にあった霞ヶ浦町の旧称)の村長の経験もあり、政治とは縁の深い人だったのですが、私と妻が結婚した直後、義父が市長選に立候補することになり、右も左もわからない状態でしたが選挙のお手伝いをして、多くの市民の方とお会いしたのが事の始まりです。
義父が市長になった後、ますます市民の話を聞く機会が多くなり、この地域が抱えている問題や市民生活で困っていることなどいろんな話を聞くうちに、なんとかしたいという思いが芽生えました。

義父は二期目を目指す選挙で落選したのですが、その思いを少しでも引き継いで、新しいかすみがうら市のために働きたいと思い、市議会議員に立候補し、2期務めさせていただきました。市議会議員として一生懸命やりましたが、やはり首長の執行権や裁量の大きさを感じて、私も首長として思い描く理想のために働きたいと思うようになりました。そこで市長選に立候補し、一度目は落選しましたが、二度目に当選して市長として働き始めました。

< まちづくりへの思い~育った環境やこれまでの経験を経て~ >

ー先ほど、思い描く理想のために働きたいとのことでしたが、宮嶋市長にとっての理想のかすみがうら市とはどのようなものでしょうか。

宮嶋市長:

私は、まちづくり3か条として

1. 住むひとにやさしいこと
2. 活力にあふれていること
3. 未来志向であること

を掲げています。この3つがバランスよく実現することが理想ですが、特に「まちが優しいかどうか」が大きいと思います。

優しいとは、人に例えると「見た目が優しい人」「フレンドリーで一緒にいて面白い人」など目に見える部分。そして「その人がどういうことをやっているのか」「自分とどういう関係を築いてくれるか」という内面や行動の部分。見た目はいかついけど、実はとても心優しい人もいます。

それをまちに当てはめてみると、まず目に見える面として「市民目線で弱者にも住みやすいというような形・デザインとしての優しさ、暮らしやすさ」が必要だと思います。そして内面や行動に相当する面として「みんなと交流が持てるか。やる気のある人が頑張れるか。困った時に助けてもらえるかという目に見えないところでの、中身の優しさ」。この2つが備わっているところに人は住みたいと思うし住み続けたいと思うでしょう。そのようなまちが理想ですね。

しかしこの理想を実現するには経済力も必要です。企業が元気に活動できるようにしたり、住民同士で活発な交流ができるようにしたりするには、交通網や道路がきちんと整備されていなければなりません。そのためには、経済的な基盤が必要です。経済力を持ち、インフラを整備して、活力をどうやって引き出していくかという視点が大切になってくると思います。

ーまちづくり3か条を掲げていらっしゃいますが、この3つを掲げていらっしゃる理由や背景について教えてください。

宮嶋市長:

私の祖父はキリスト教の教会の牧師をしていて、戦後行き場を失った子どもたちが駅でたむろして裸足で歩き回って苦しんでいる状況の中で、戦争孤児を自分の家に呼んでご飯を食べさせたりしていました。のちにきちんと認可を受けた養護施設になりましたが、それまでは自費でやっていたんですね。
当時、私はまだ子どもだったのですが、父や兄弟たちは、ヤギを飼ったり畑で作物を育てたりしながらみんなの食事を支える暮らしをしていました。

だんだん時代が移り変わると、戦争孤児ではなく、家庭の事情で親と一緒に暮らせない子供を預かるようになりました。そのような子どもたちにとっては教会や養護施設が実家のようでした。私は、そうした人たちと兄弟、姉妹のように育てられたこともあり、社会の在り方について「優しさ」の視点が大切だなと、だんだんそういう思いに至りました。

与えられた環境の中で、まっすぐのびる力は本人だとしても、曲がらないようにサポートするのは行政や社会の責任の部分もあると思います。一方でそれを支えるだけの力も必要です。福祉は継続させることが大切です。活力を生み出すエンジンがあってそういう施策が生まれる。活力とあたたかさ、両方がないと理想の社会は実現しないと思っています。

< これから取り組んでいきたい政策 >

ー市長になられたばかりですが、まず力を入れていきたい政策や取り組みはありますか?

宮嶋市長:

これまで、市民が知らない間に、一部の人たちだけで政策が決められ、発表になってから市民がびっくりするということがありました。まずは、地域ごとの課題をしっかりと役所の方が出向いていき話を聞き、そして市民の声を十分に吸い上げて政策を立案し実行していくような市政運営に変えていきたいと思っています。

先日、市内6つのエリアで地域ミーティングを行いました。とても活発な意見交換ができました。

ー活力を生み出す、そして支えるためにどのような施策に取り組んでいきたいと考えていますか?

宮嶋市長:

まず、市民生活の面で言えば、市民の交流を活発にしたいと思います。
役所に求められていることは、市民の皆さんの活躍する、活動する舞台づくりだと思っています。でこぼこの道では車を運転することはできないし、水たまりがあっては歩けない。企業活動でも市民活動でも、市民の皆さんが思う存分に活動ができるように環境を作っていくのが私たちの仕事だと思います。職員は縁の下、見えないところで努力する。いろんな障害をなるべく無くして、市民の活動の利便性を高めるというのが仕事です。そして、その方向付けをするのが市長の役目だと思っています。

ー活力を生み出すとのことですが、特に若者に対しては何を期待していますか?

宮嶋市長:

現役世代の人たちが都会志向であることは、ある意味仕方がない部分もあるし、都会生活をしていくことは貴重な経験になると思います。しかし、より人間らしい生き方や生活を実現したいと思ったり、子どもができる年代になったりすれば、地元に戻って自分の育った場所で暮らしたり、子育てするというような選択も視野に入ってくるでしょう。そういう時に、生活の場として選んでもらえるまちにしなくてはいけないと思っています。

かすみがうら市は都心にも近く、自然もたくさんあります。一つは交通の利便性を高め、ここに住みながら仕事ができる環境作り、もう一つは寛容な社会、認め合って失敗しても何度でもチャレンジができるような環境作りを、と考えています。

ー「現実と向き合い、将来も見据えた政策を行う」と掲げていらっしゃいますが、具体的にどのような政策を行って行きたいと考えていますか?

宮嶋市長:

将来を見据えるとは、子どもたちのサポート、子育て世代のサポートです。子育てはお金がかかります。日本全国で少子化だから人口を増やさないといけないという課題があります。しかしその一方で子どもが増えた家庭ほどお金がかかるのが現状です。これを解決できないか。ヨーロッパでは子どもが多ければ多いほどサポートが増えて、税制も安くなる国もあります。市もそういう方向を目指していきたい。さらに、産む環境の整備もしていきたいと思います。現在産婦人科がかすみがうら市にも隣の石岡市にもありません。安心して近くで産める環境を確保して、あそこだったら安心して子どもを産み育てることができると思ってもらえるような取り組みをしていきたいと考えています。

また農業が盛んな地域なので、地場産を活用したオーガニックな給食の提供にも取り組みたいと考えています。直接口に入るものなので、質のサポート、健康で心身ともに強い人になってもらえるようなサポートをしていきたいと思います。

< 「お」「と」「な」な生き方を >

ー最後に、ジャパンプロデューサーとして若者に伝えたいことを教えてください。

宮嶋市長:

学校を卒業する人達に「大人ってなんだろう」という話しをすることがあります。大人といっても、実際年齢は上でも子どもみたいな人もいるし、若いけどしっかりしている人もいるように、年齢で切れないですよね。

そこで一つの見方として、大人って何だろうと思ったときに、
おとなの
「お」は己。自分。
「と」は隣。取り巻き。自分の外にある環境や社会。
「な」は納得。なるほど。

つまり自分が後悔しない生き方、納得できる、没頭して情熱をささげられるような生き方をすることが第一。しかしそれが社会的に認められない、排除されるようなものは難しいですよね。自分も納得、社会も納得してもらえるような、納得させられるような道に突き進むことができる人、それが大人だと思います。
あらゆる方向で、自分の情熱をささげられるような生き方を目指してもらいたいと思います。

もうひとつ、若い頃のチャレンジは大切ですが、そのチャレンジを続けていけるのか?という継続性の問題があります。
思い付きでやるのは若さの特権でもありますが、それを継続し、経験や知恵を重ねていけるのかというところは若い人の課題だと思います。続けていくことを見据えながら、チャレンジしてもらいたいと思います。

ーまた若者に期待することはありますか?

宮嶋市長:

社会は多様化の時代です。政治の世界でも、古いタイプの政治家のイメージとは違う方が少しずつ出てきているのは良い兆しかなと思います。従来の固定概念にとらわれることなく自分らしさを伸ばし発揮してもらいたいと思います。

(インタビュー:2022-11-28)

プロフィール

■生年月日 昭和38年8月8日
■略歴
昭和38年(1963年) 8月8日生まれ
昭和57年 明治学院高校卒業
昭和59年 明治学院大学中退
昭和59年 印刷会社を経て出版業界へ。
平成22年 結婚により宮嶋姓となり、家業の牧場に就業
平成27年 かすみがうら市議会議員(1期目)
平成30年 かすみがうら市長選挙に立候補するも惜敗
平成31年 かすみがうら市議会議員(2期目)
令和4年7月10日 かすみがうら市長選挙で当選
令和4年7月23日 第5代かすみがうら市長に就任

※プロフィールはインタビュー時のものです。
宮嶋市長とのインタビューの様子
2022年11月28日 かすみがうら市役所にて
(左:宮嶋市長 右:ドットジェイピースタッフ)

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