ジャパンプロデューサーインタビュー

Vol.208 [首長] 平野 公三 岩手県大槌町長 「まちづくりは人づくり、人づくりは教育にあり」

〝まちづくりは人づくり、人づくりは教育にあり〟
大槌町長 平野公三
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.208

ホタテ、ワカメ、ノリ、カキの湾内養殖が盛んな新巻鮭発祥の地。
東日本大震災の復興から、町の発展へ足を進める
大槌町の平野公三町長にお聞きしました!

< 大学時代の決断 >

ー町役場に入庁したきっかけについて教えてください。

平野町長:

私が駒澤大学を卒業する今から40年以上前は不況による就職難だったため、なかなか就職先が見つかりませんでした。その際に両親から「地元に戻ってほしい」と言われ町役場を受験し、幸いにして合格することができました。
そして、昭和55年(1980年)に大槌町役場に入庁し、2011年3月11日に発生した東日本大震災津波の際には主幹を務めました。

ーご両親に恩返しをしたいという思いから公務員を志したのでしょうか?

平野町長:

両親が望んでいたというのは確かにありますが、地元に帰ることが親孝行だったとは言えないかと思います。
自分の好きなことをできることが両親の恩に報いることかと思います。

しかし、震災などを経験した今になってみると、当時の自分は「何をすべきか」「何をしたいのか」という思いはしっかりしたものでは無く、町のために志高くという思いはあまり無かったような気がします。
正直に言ってしまえば、決して公務員志向ではなかったので、もしかしたら別なところで自分を活かすことができたのではないかと思うところもあります。

町役場合格後は、大槌町の皆さんのために、責任を持って行政運営に取り組まなければならないという強い思いがありました。

< 東日本大震災から町長を志す >

ー大槌町長を志したきっかけをついて教えてください。

平野町長:

東日本大震災がきっかけとなり、自ら街づくりをしたいと思い町長に立候補しました。

選挙は水ものですので家族からは反対されましたが、震災における様々な政策について、反対を押し切ってでも自分の想いを打ち出していきたいという思いが強くなり、多くの方々の後押しもあり立候補しました。

当時は公務員だったため、選挙そのものに対して距離感を置いており、自ら立候補し町長選に挑むことがどういうことなのかも分かっていませんでした。
立候補時の苦労は大変なもので、自分をどのようにアピールするのか。政策はどうするのかということを俯瞰した形で訴える必要があるので、選挙までの約3カ月間は手探りの状況で押しつぶされるような状況が多々ありました。

ー町長になる際に大変だったことは何でしょうか?

平野町長:

元々公務員として働いていましたので、強みとしては行政を知っていることでしたが、弱さとしては行政を知り過ぎていることです。
私自身が職員をよく知っていますし、様々な形で職員それぞれがわかる状況の中で行政運営をしていくとなれば、事務事業という小さなものではなく、ビジョンを掲げて大きく舵取りをしていかなければなりません。

公務員はセクション主義であり、それぞれ縦割りの中で動きますので、全体を俯瞰しながら創るビジョンが大切だと身に染みて感じました。

< 大槌町の人づくり >

ー30年後の大槌町について教えてください。

平野町長:

30年後として大きく頭に浮かんだのは人口の減少です。
30年後にはICT含めて、今現在考えていることの殆どが通用しなくなっているかと思います。

町のハード面では、震災後に整備をした防潮堤や、道路、下水などのインフラも30年後には更新時期に差し掛かり、そのコストがどのような形で住民の生活に影響しているかが懸念事項としてあります。
ソフト面についても、太平洋側の地域経済を支えている鮭が温暖化の影響で獲れていませんので、漁業を含めた一次産業はどうなっていくのか不安はあります。

これからの30年が厳しい状況であるとは思いますが、それぞれの知恵、熱意を持ってしっかりとまちづくりに取り組んでほしいですし、まちづくりのプレーヤーを生み出す取り組みが必要かと思います。
住民だけではなく、町に関わった様々な方々の知恵や熱意をお借りしながらのまちづくりが着々と進むことを期待しています。

ー30年後の理想の大槌町を実現する上での現在の一番の課題は何でしょうか?

平野町長:

住民や町に関わる人が自分の意見を持ち、発言していくことが必要です。
発言できる人や、行動を起こせる人たちが多く出ることを期待しております。

他にもオンラインやSNSをツールとして自分の気持ちを言葉に出して話すことが必要かと思います。

また、プレーヤーが熱意を持ち、希望を持ってまちづくりに取り組んでいくことが町の活性化に繋がると考えています。
そのような人を一人でも二人でも多く輩出する環境づくりが今の大槌町の課題であり、私たちの将来の目標だと思います。

ー理想の大槌町のために今後行おうと考えている政策について教えてください。

平野町長:

これまでは東日本大震災の影響もあり災害公営住宅を作ったり、新たに家を建てる方には補助を出すなど生活再建を第一に進めました。
これからは産業振興や地域振興を前面には出しますが、「まちづくりは人づくり、人づくりは教育にあり」と考えていますので、教育にしっかりと力を入れていこうかと考えています。

教育は1年2年では達成できませんので、長い期間をかけて教育に対し力を入れることで人を育てていく必要があるかと思います。

< 人と人との繋がりを大切に >

ー若者に対して伝えたいことを教えてください。

平野町長:

人生を豊かにするには人と人との繋がりを大切にすることが大事です。
コミュニケーション能力を高め、自分が思うことを心に留めるのではなく、周りの方々とお話ししてほしいです。

そのためには、是非とも読書もしていただきたいです。本は一生の宝物です。
多くの言葉を知り、心のひだを言葉として表すことができるのは読書以外には無いかと思います。

読書を進めながら、自分の言葉としてしっかり話せる人になってもらうことが、自分のため、国のため、世界のためになるかと思います。
多くの若い人たちが自分の想いを実現するために広く開かれた世界で頑張ってほしいと思います。

(インタビュー:2022-02-21)

プロフィール

■生年月日  昭和31年6月15日
■略歴
昭和55年4月 大槌町役場入庁
平成27年4月 大槌町役場退職
平成27年8月 大槌町長(現在2期目)

※プロフィールはインタビュー時のものです。
平野町長とのインタビューの様子
2022年2月21日 zoomにて
(左:平野町長 右・下:ドットジェイピースタッフ)

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