ジャパンプロデューサーインタビュー
Vol.194 [首長] 大森 雅夫 岡山県岡山市長 「市民が幸せに暮らせる岡山市に」
市民が幸せに暮らせる岡山市に
岡山市長 大森雅夫
JAPAN PRODUCER INTERVIEW vol.194
政令指定都市の岡山市。
70万以上の方が暮らす岡山市の大森市長にお話を伺いました。
市民が幸せに暮らせる街にしていくためにどのような取り組みをされているのでしょうか。
< 市長になったきっかけ >
ー岡山市のために何かをしようと思うようになったきっかけを教えてください。
大森市長:
私は生まれてから高校を卒業するまで岡山市に住んでいました。それから大学で東京にでてきて国家公務員になり、色々と仕事をしていく内に「岡山の動き」というのがやはり気になってきました。
私は国家公務員を辞める前に国土交通省の国土政策局長を務めていたのですが、その頃には岡山がどのように変化しているのかというのを気にかけていました。しかし、岡山の活躍というのを全国紙でみる機会は少なく、動きがよく見えないなと思っていました。また、年2回ほど岡山市の方に里帰りもしていたのですが、その際も岡山のまちの変化というものを感じることが出来なかったんです。
そのように岡山の動きに課題感を抱いている中で、地元の方々から「市長選に出てみてはどうか」という誘いを受け、自分自身岡山市のために尽くしてみたい、岡山市を何か変えていけないか、というように考えるようになりました。その中で微力ではありますが、岡山を発展させることで東京一極集中の日本の構造自体も変えていきたいという思いを持つようになりました。
ー2013年に市長になろうと決めた理由を教えてください。
大森市長:
少し例え話になりますが、人生3段ロケット論というものがあります。これは人生を生きる中で、夢には3つの段階があるという話です。まず、1段目のロケットは学生の時に持つ夢です。学生の時に抱いた夢を実現させようとみんな頑張るんですね。しかし、その中で挫折や新たな出会いなどにより夢を変化させるようになる。そうやって出来た新しい夢が2段目のロケットです。そして、自分が成長していく過程の中で様々な経験をし、今までの夢をもっと変えていこうとし、最終的に完成した夢が3段目のロケットです。この3段階のロケットのように夢を変えながら、3段目の夢を実現していくのが人生3段ロケット論です。
これを私に当てはめますと、私も当初岡山市を良くしたいという思いをもっていました。そのなかで、国家公務員として働く中で成長をしていき、自分で岡山市を良くすることができる可能性がでてきた。そして、国家公務員ということで政治家への垣根が低く、実際に市長になる可能性が他の人より高かった。ならば3段目のロケットとして岡山を良くするという自分の夢を叶えようと思い岡山市長選に立候補しました。
< 市民が幸せに暮らせる岡山市に >
ーここまで過去のことを聞きましたが、現在大森市長が力を入れられている教育分野への思いを教えてください。
大森市長:
まずは、前提となる話ですが岡山市は全国で20市しかない政令指定都市です。では、今後岡山市としてどのような方針で市政を進めていくかといいますと、ある一定の分野だけを伸ばすというわけではなく、都市としての総合力を伸ばしていかなければなりません。どの分野も満遍なく充実させていく必要があるのです。例えば、経済面だと経済的な力強さも必要ですし、生活面だと住みやすさなど、また平成30年の豪雨のことを考えると安全・安心に暮らすための防災面での整備ということも必要になります。そのため、都市の総合力を伸ばすというのが岡山市のメインテーマではあります。
しかし、その中でも特に注力しなければならないのは『人』に関わる政策です。やはり、そこに住む人が幸せでなければ、その市が成り立たないわけです。人を大切にできる市でなければならない。では、人を大切にするとは何なのか。それを考えた時に教育というのがその一つの大切な要素なんです。
今、岡山の高校生をはじめ学生・若者たちはESDやSDGsに本当に熱心に取り組んでもらっています。この学びというのは彼らにとって本当に大事な学びになっています。ESDやSDGsを学ぶ中で、地球の将来は自分たちの将来と同じである、そういった考えを持つことができるようになっています。この考えというのは彼らが将来生きていく中で重要になってくると思っています。
ー今後どのような岡山市にしていきたいと考えていますか。
大森市長:
やはり先ほども述べたように、そこに住む人が幸せでなければその市としては成り立たないわけです。従って、岡山市に住む人が幸せに暮らせるようにしていきたいというのは変わらない思いです。例えば、保育環境では待機児童解消なども行っていますし、他にも障害あるお子さんの受け入れの支援もしています。こういった施策によって子ども達もその親御さんもどちらも幸せに暮らすことができます。
また、教育については、この3年間で岡山市の小中学生の学力はずっと上がっているんですね。しかし、私は今後ずっと学力を上げ続けていく必要はないと思います。なぜなら、これからの世の中はどうなっていくか分からないですよね。普通の教育であれば問に対して必ず答えがあるんです。しかし、今後の世の中に正解はないです。私達も日々、どんな世の中になっていくか議論をしていますが、正解は分かりません。ですから、今の若い子達も模索して試行錯誤していくようになってくる。その中で失敗しながらも再挑戦していくことのできる、自らの意見を堂々といえるような人材を創っていきたいと思います。そして、そのような若者が今後の岡山市を支えていき発展させていくことができればと思っています。
< 学生へのメッセージ >
ー最後に政策立案を行う学生に対してメッセージをください。
永野市長:
学生達に考えて欲しいのは、将来的に自分たちはどうなるんだろうという不安がきっとあるはずです。そういった不安を率直に政策というものに表してみるといいのではないかと思います。
例えば、グレタ・トゥーンベリさんが環境問題に取り組んでいることは有名なことだと思います。あれはグレタさんという若者が、地球の将来という今後の不安を原動力に取り組んでいるから、メディアに取り上げられて大きな影響力を持っているわけです。ですから、若い世代が持っている希望や不安というのを基盤として、そこから政策を考えるということが大事になると思います。
そして、不安というのを政策として具体化していく上で、政策というのはやはり専門的なものですから、大学などで学んでいることを活かしてもらいたいです。自分の学んでいることなどを、漠然と抱えている将来的な不安にぶつけるということで政策として具体化できると思いますので、頑張ってもらいたいです。
(インタビュー:2021-12-20)
プロフィール
■生年月日 昭和29年2月25日
■略歴
1954 年 岡山市東古松に生まれる
1966 年 岡山市立鹿田小学校 卒業
1969 年 岡山市立桑田中学校 卒業
1972 年 岡山県立岡山操山高校 卒業
1977 年 東京大学法学部 卒業
1977 年 建設省入省
1985 年 熊本県企画開発部企画課長
1994 年 建設省大臣秘書官事務取扱
1995 年 同 大臣官房文書課広報室長
1996 年 国土庁大都市圏整備局首都機能移転企画課長
1998 年 中央省庁等改革推進本部事務局参事官
2002 年 国土交通省道路局総務課長
2003 年 内閣府大臣官房会計課長(兼)内閣官房内閣参事官
2005 年 国土交通省大臣官房審議官(建設産業)
2008 年 内閣府政策統括官(防災担当)
2011 年 国土交通省政策統括官(税制・国土担当)
2012 年 国土交通省国土政策局長
2013 年 同 退職
2013 年 岡山市長選挙 初当選
2017 年 岡山市長選挙 二期目当選
2021 年 岡山市長選挙 三期目当選
※プロフィールはインタビュー時のものです。
2021年12月20日 zoomにて
(左:大森市長、右:ドットジェイピースタッフ)